ウイルスに対する免疫応答の仕組み(1)

 ウイルス・再生医科学研究所 河本 宏

抗原を捕捉した樹状細胞はリンパ節へ

獲得免疫系の反応の仕組みを、鼻粘膜にウイルス感染が起こった場合について考えてみましょう。病原体の感染が起こると、まず自然免疫系の反応としてマクロファージや好中球などの食細胞が食べます。ウイルスの場合も、細胞内に侵入することができたもの以外は、貪食されます。

さて、食細胞の1種に、樹状細胞という細胞があります。樹状細胞は獲得免疫系の始動役を果たします。皮膚や粘膜に沢山いて、ウイルスを貪食すると、病原体特有の分子を感知して活性化されます。活性化されると、リンパ節へと移住します。貪食したウイルスのタンパク分子を分解してその断片をMHC(ヒトではHLA)という分子の上に乗せ、T細胞に提示します(図1)。

獲得免疫系の概要

まずはこの後起こる獲得免疫反応の全体像をみていきましょう(図2)。ここで、ヘルパーT細胞というT細胞に登場してもらいます。樹状細胞は、ヘルパーT細胞を活性化します。活性化されたヘルパーT細胞は、B細胞を活性化して抗体をつくらせます。抗体は体液に溶けた状態で働くので、これを液性免疫といいます。

一方ヘルパーT細胞はマクロファージも活性化して、その貪食作用を促進する働きもします。樹状細胞は他にキラーT細胞を活性化し、キラーT細胞は感染細胞を殺します。これらの場合、細胞が直接働くので、合わせて細胞性免疫といいます。

病原体に特異的な抗体の産生が起こる仕組み

図2の反応をもう少し詳しくみていきましょう。

リンパ節に辿り着いた樹状細胞は、T細胞が多い領域に居座ります(図3)。ヘルパーT細胞は樹状細胞のところへ次々とやってきて、接触します。そのヘルパーT細胞の中に、数万個-数十万個に1個程度の頻度で、ウイルス抗原に反応できるT細胞があります。

樹状細胞と反応したヘルパーT細胞は、活性化されます。まず起こる事は「増殖する」ことです。その後、ヘルプを必要とするB細胞を探しまわります。

一方、ウイルス自体やウイルスの破片はリンパ液の流れに乗ってリンパ節に流れてきます。さて、次が大事なところです。ウイルスに結合できる抗体を出しているB細胞が病原体に出会うと、表面の抗体分子がウイルスにくっついて、ウイルスを貪食します(図3左)。そしてウイルスを消化し、その断片をMHC分子の上に提示して、T細胞のヘルプを待ちます。

T細胞から見ると、自分を活性化してくれた樹状細胞と同じウイルスの断片を出しているB細胞ということになります。そのようなB細胞に出会ったT細胞は、B細胞によって活性化され、そしてお返しにB細胞を活性化します。

B細胞からみると、T細胞から「あなたは抗体を作って下さい」という「お墨付き」をもらったことになります。B細胞は、旺盛に増殖してから抗体を産生する細胞に分化し、抗体を作り始めます。こうして、病原体に特異的な抗体だけがつくられるのです。

細胞性免疫の仕組み

B細胞が活性化されたのと同じ仕組みで、抗原を取り込んだマクロファージも活性化されます(図3中央)。これにより、感染部位での貪食が活発になります。

一方、抗原を取り込んだ樹状細胞がリンパ節の中で抗原特異的なキラーT細胞に出会うと、キラーT細胞は活性化されて、増殖した後、リンパ節の外に出て行って、組織にいきます(図3右)。そこには、ウイルスに感染した細胞がいます。そういう細胞は、ウイルス由来のタンパクの断片を、MHC分子の上に提示して、T細胞にみつけてもらうのを待っています。こうして、キラーT細胞は、特定の病原体に感染した細胞だけを選び出して殺すのです。